CM音楽制作、商品の魅力を伝える

音楽はCMになくてはならない存在

2019年11月01日 10時51分


 

音楽は感情に訴える


なぜ音楽はCMになくてはならない存在なのか?それは音楽が感情を刺激するからです。音楽は「フィーリング」とか「感情」といったものを揺さぶることが得意です。好き嫌いの問題ではありません。たとえば「嫌い」だったとしても、十分に感情に訴えていると言えるのではないでしょうか。私たちの多くは、雰囲気作りや何か感傷に浸りたいときに音楽の力を借ります。音楽は手で触れることのできない何かを動かすことができるのです。
 
 音楽によってCMは、より心に残る
CMのビジュアルは思い出せないのに、そのCM音楽は思い出せるという経験はありませんか?これは多くの人が経験しているはずです。同じCMのナレーションもおそらく忘れられているはず。でもなぜか音楽だけは思い出せる。これはラジオCMの多くに音楽が使われている理由でもあります。
 
 音楽で特定の層にアピールすることができる
音楽は特定の年齢層にのみ響くことがあります。たとえばジャズやブルースのような音楽は、あまりティーンエイジャーにはアピールしないでしょう。しかし、年齢層が上がるごとにアピール度は高まります。アニソンは幅広い年齢層に響きそうですが、高齢者にはあまりアピールしないでしょう。
 
 音楽はCMのまとめ役
音楽は感情に訴えます。「幸せ」「悲しみ」「恐怖」「驚き」など、音楽は人々の感情と密接な関係があります。CMでは映像や言葉という要素も重要ですが、音楽はこれらの情報を感情といっしょに人々へ届けます。音楽はCMの中で「まとめ役」的な仕事もこなしています。
 
 CM音楽・これが大切
やはり感情
音楽は感情に訴えます。そして音楽はビジュアルやナレーションという他のメッセージ要素をまとめて視聴者に伝えます。繰り返しますが、音楽はCMのまとめ役です。
 
シンプルでキャッチーに
CM音楽に込み入ったプログレは合いません。(時と場合によります)基本はシンプルで耳に入ってくるメロディーです。わかりやすいコード進行とサクサクと刻まれるリズムは、CM全体の流れを演出するのに効果的です。

 
 CM音楽制作のプロには意外な能力が必要
テレビのコマーシャル制作では、商品やサービスの魅力をしっかりと視聴者に伝える必要があります。これはインストゥルメンタルでもそうです。CMの制作にはたくさんの人が関わります。特にミュージシャンはそれぞれが特徴を持っているため、ネットワーキング能力が高ければ高いほど、いろんな案件に対応することができるのです。
 
日本では、広告代理店から音楽プロダクションにCM制作の注文が入る流れが一般的です。CM音楽プロデューサー、作曲家の仕事は、受注から実際にCM音楽ができあがるまでのプロセスにおいて、音楽を作ることはもちろん、音楽の知識、実際の演奏を担当するボーカリストやミュージシャン、広告代理店担当者などのクライアントとの交渉、すべてをマネージメントする能力が求められます。
 
どんな仕事でもそうですが、CM音楽制作の世界も信頼関係が大切です。幅広い分野に信頼関係を築くことで、継続的に仕事ができるようになります。

 
 CM音楽の作り方
CM音楽には、必ず発注者(クライアント)がいます。クライアントが欲しい音楽を作ることが、CM音楽プロデューサーの仕事ですが、まずはどのように仕事が始まるのでしょうか?
 
CM音楽は、直接クライアントから依頼が来る場合もありますし、仕事を受注するためのコンペが開かれる場合もあります。どちらの場合でも、クライアントが頭に描いている音楽のブリーフィングが行われ、音楽を作る側はそれに応じて企画を提出。採用されれば仕事が始まります。
 
クライアントが頭に描いている音楽。その説明には書かれていない何かがあることを理解する必要があります。作曲に入る前に、クライアントと多くのコミュニケーションをとり、求めている音楽の全体像をつかむことが大切です。場合によっては、クライアントが参考となる音源を提供してくれる場合もあります。これにより、時間を大幅に節約し、より明瞭なものにすることができます。
 
クライアントに企画を提出する際は、1つのオプションだけではなく、複数のオプションを提出するようにしましょう。何種類かのバージョン、たとえばクライアントの要望に近いものと、少しかけはなれた要素が組み込まれているものを用意するとおもしろいかもしれません。音楽を作る側の創造性がはっきりと打ち出されているものがいいでしょう。
 
現在は音楽制作の依頼も多種多様化しており、テレビCMだけではなく、ウェブサイト向けの広告やソーシャルメディア向けのコンテンツまで広がっています。CM音楽を作る側としては、クライアントがターゲットオーディエンスに向けて発信したいことを、確実に伝わるように音楽に乗せる。その音楽にはキャッチーな歌詞がついているかもしれないし、インストゥルメンタルの場合もあります。音の高低ですらオーディエンスに訴えかけることができます。CM音楽を作る人間は、音楽という言語を駆使して私たちの心を動かすことが仕事です。
 
持てる知識やテクニックを駆使して曲作りに入りますが、作曲家により、鼻歌から即興で作り上げる人もいれば、緻密な考えを基に作曲する人もいて、スタイルはさまざまです。しかし、CMは普通15秒。本編の長さが15秒なので、そこに使われる音楽の長さはせいぜい10秒ちょっとでしょう。クライアントから注文があれば、さらに長さが制限される場合もあります。この10秒の中に、オーディエンスの心を動かすメッセージを仕込まなければならないのです。
 
また、音楽にはテンポがあります。テンポも人の心に影響する大きな要素です。人にとって気持ちの良いテンポはありますが、ちょっとテンポを落とすと、やはり時間的制約を受けやすくなります。
 
しかし、短いCM音楽ではありますが、なんらかのストーリーが必要です。これは曲の構成、つまりイントロやサビといったパートです。通常の楽曲と比較すると短いものですが、CMで使われている部分以外にも、別の「セクション」がある曲と考えるといいでしょう。ただ、すべての仕事でこのフォーマットは必要ありません。
 
CM音楽を作る場合、シンプルという言葉は常に頭に入れておくべきです。シンプルなメロディー、シンプルなベースライン、シンプルなコード進行、そしてシンプルな歌詞。これらはほとんどの場合、ダイレクトに人の心を動かすために役立ちます。
 
しかし、CM音楽プロデューサーは、どこにも書かれていないルールに遭遇することがあります。どこにも書かれていないルールなら、そもそも存在しないのでは?という人もいるかもしれませんが、これはやはりルールなのです。これは漠然としたものですが、基本に立ち返るとか、原点に戻る、と同様のものかもしれません。
 
もしもクライアントが「サウンドロゴ」(たとえばIntelのCMの最後) を必要としている場合は、強力に視聴者の脳裏にイメージを焼き付けるメロディーでなければなりません。明確に記憶に残るメロディーは、それがどこで聞こえてきても、その企業をイメージさせる必要があります。サウンドロゴは、日本のCMでも昔から頻繁に使われています。長くても数秒というサウンドで企業イメージを表現する難しい仕事では、クライアントとの密なコミュニケーションによる理解が大切です。
 
完成したCM音楽トラックは、通常、いくつかの異なるバージョンを用意する必要があります。CMには何種類かの長さの異なるバージョンがあるからです。日本のCMも、長さの異なるバージョンが用意されていることが多いですね。
 
CMは、音楽ありきで作られるのではなく、通常は映像の上に重ねられるものです。そのため、CM制作の流れの中では、時間的に制約されやすいパートと言えるかもしれません。何か問題があった場合には、必ずしもやり直す時間がない場合もあります。そのため、フレキシブルな仕事のスタイルが要求されます。もちろん、核となるものはクライアントとの打ち合わせをベースとしたものです。しかし、作業の途中で映像に変更が入ることもあります。CM音楽制作は、このような際の対応力も試されます。CM音楽の制作者にとっては迷惑な限りですが、突然の変更でも臨機応変に対応できるよう準備しておくことが重要です。


 

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